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糖尿病とシックデイ(病気の日)の対応法

[2021.01.23]

糖尿病患者さんが風邪やインフルエンザなどの病気にかかると、普段血糖コントロールできていても、血糖値が高くやすくなり、時には重篤な急性合併症が起こりやすくなります。そのような状態をシックデイと呼んで、糖尿病の療養生活上、特別な注意が必要な日とされています。

シックデイの状態で注意することとして、最も重要なものは高血糖です。シックデイに該当する病気として、風邪や下痢、発熱、腹痛、食欲不振などのほか、外傷や骨折なども当てはまります。
 このような病気や外傷などは体にとってストレスとなるので、ステロイドホルモンなどのストレスホルモンが分泌されます。ストレスホルモンは急性期における体の障害の防御に役立つ面がある一方で、インスリンの働きを弱め高血糖を引き起こします。糖尿病でなければ血糖上昇に応じてインスリン分泌が増えるものの、糖尿病の患者さんではインスリン分泌能が低下していることが多く、十分に対応することができません。このためシックデイには血糖値がいつもよりも高くなります。その反対に、シックデイには食欲が低下していつものように食べられないことが少なくありません。薬物療法をしている患者さんの場合、食べる量が少ないにもかかわらずいつもどおりに薬を飲んだり、インスリンなどを投与すると、低血糖が起きてしまいます。さらに、病気によって生じる脱水が腎臓の機能を低下させるので、腎臓から排泄される薬の場合は、その成分が尿に排泄されず、体内に残るため血糖値が余計に下がるという影響もあります。
 つまり、シックデイにはさまざまな要因が複雑に絡み合って、血糖値が乱高下しやすいということです。

また危険な合併症も生じやすいです。

日常の糖尿病治療の大きな目的は、長期間での高血糖によってゆっくり進行する「慢性合併症」(網膜症や腎症、動脈硬化など)を防ぐことです。しかし合併症には、病状が時々刻々と進行する「急性合併症」というタイプもあります普段は滅多におきませんが、シックデイには急性合併症が起こりやすく、対処が遅れると生命の危険も生じます。

1型糖尿病患者さんでは糖尿病性ケトアシドーシス、高齢の2型糖尿病患者さんでは高血糖高浸透圧症候群に特に注意が必要です。

糖尿病性ケトアシドーシスはインスリンの作用が足りない時や、食事(炭水化物)の摂取量が少ない時、体内では糖質がエネルギーとして使われないので、脂肪がエネルギー源として使われ、その時に肝臓でケトン体という物質が作られ血液中に蓄積します。ケトン体は酸性なのでその量が増えると血液が酸性になり、アシドーシスになります。その状態を「糖尿病性ケトアシドーシス」といい、吐き気や腹痛が現れ、進行すると意識障害や昏睡に至ることから、緊急治療が必要です。糖尿病性ケトアシドーシスになる原因の多くは、普段インスリンを打っている患者さんが、食事が食べられないからインスリンを打たないという事です。食事が食べれないときは普段より減量してインスリンを打つなどの対処法を主治医の先生と相談しておくことが大切です。

高血糖高浸透圧症候群の原因は高度な脱水が多いです。シックデイで高血糖となると、尿浸透圧が上昇し、体内の水分が少なくなり、体は脱水状態となります。さらに食思不振、下痢、などから脱水状態は悪くなり、さらに血液が濃縮されるので血糖値がより高くなります。このような悪循環によって引き起こされるのが高血糖高浸透圧症候群で、高齢者では意識障害を伴うこともあります。

またシックデイ時の投薬上の注意も多いです。メトホルミン、SGLT2などの薬は中止し、その他の投薬も主治医の先生に確認する必要があります。

 

お糖さん 高瀬真吾

糖尿病専門医、内分泌専門医

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