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GLP1受容体作動薬について〜糖尿病治療薬紹介〜

[2021.05.06]

糖尿病の治療は様々な製剤が開発されており、内服薬と注射製剤があります。注射薬には、インスリンとGLP-1受容体作動薬があります。また最近ではGLP1製剤の内服薬も存在します。
ではGLP-1受容体作動薬とはどのような薬か、またインスリンとの違いについて今回はご説明させて頂きます。

 

GLP1とは

食事で口から摂取し、糖分やアミノ酸などが消化管(小腸)まで運ばれると、小腸からインクレチンという消化管ホルモンが分泌されます。GLP-1(glucagon-like peptide-1)は、このインクレチンのひとつで、膵臓のβ細胞にあるGLP-1受容体と結合してインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる働きがあります。

 

GLP1受容体作動薬の働きについて

GLP-1受容体作動薬はインスリン分泌を促進、血糖値を下げる薬がメインの作用ですが、その他にも様々な働きがあります。ここでは主な臓器、膵臓、消化管、中枢神経での働きについて説明させて頂きます。

●膵臓
・膵臓のβ細胞に働きかけて、インスリン分泌を促進し、血糖値を下げる。
・膵臓のα細胞に働きかけて、グルカゴン分泌を抑え、血糖値の上昇を抑える。

●消化管
・胃の働きを抑えて、胃の内容物が小腸へ排泄されるのを遅らせて、食後血糖値の急激な上昇を抑える。

●中枢神経
・視床下部に直接作用して食欲を抑える。

 

インスリン製剤との違い

インスリン、GLP1受容体作動薬はともに注射製剤(GLP1受容体作動薬は内服もあり)です。患者さんによく違いについて質問されます。

インスリン製剤は、インスリンそのものを補うものです。1型および2 型糖尿病に使用でき、1型糖尿病ではインスリン治療が必須になってきます。持続時間や効果発現など特徴の違うインスリン製剤が数多く開発され、本来のインスリン分泌にできるだけ近づけた治療が可能です。(1型糖尿病でインスリン分泌能が枯渇しているなど、病態によってはコントロール困難例もあります) しかし、低血糖の発症リスクや体重増加がみられます。

GLP-1 受容体作動薬は、食事摂取により血糖値が上昇した際にインスリン分泌を増やすため、単独で使用する場合には低血糖を起こしにくいことが特徴です。いわゆる、血統依存に働きかけます。また、食欲を抑えるため体重減少が期待できます。適応に関してはインスリン分泌の残っている2 型糖尿病にのみ使用可能です。

 

GLP1受容体作動薬の今後について

●臓器保護作用について
最近、GLP-1受容体作動薬には大規模臨床試験において、様々な臓器保護作用のエビデンスが報告されています。血糖値を下げ、血糖コントロールを改善するだけでなく、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの発症を抑える効果が認められている薬剤があります。また、腎臓を保護する効果も認められている薬剤もあり、糖尿病合併症のひとつである糖尿病腎症に対するさらなる研究が期待されます。

●様々な製剤の開発
GLP-1受容体作動薬では、飲み薬や皮下埋め込み式製剤などの開発が進んでいるようです。

今後、更なる開発が期待されます。

 

デメリットについて

上記の説明だけでは、とても素晴らしいお薬と思われますが、デメリットもあります。

まずは費用が高額ということ。糖尿病治療薬でジェネリック医薬品のある薬と比較すると非常に高額です。高額なために持続して治療できないということもあります。

また少なからず副作用が存在します。多い副作用としては、食欲抑制、消化管の働きを抑制することから気分不良、嘔気など生じることがあります。

 

個人的にはGLP1受容体作動薬は、血糖降下作用も強く、合併症予防のエビデンス、週一回製剤(製剤によりますが)もあり、腎機能低下していても使える、食欲を抑えるなど、非常に優れた糖尿病治療薬と実感しています。しかし、大きな問題点としては非常に高価ということ。最近では新型コロナウイルスの影響で、経済的にも負担がかかっている方もいると思います。必ずしも処方できるお薬ではないということが残念に思います。

 

お糖さん 高瀬真吾

糖尿病専門医、内分泌専門医

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